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対論 脳と生命 (ちくま学芸文庫)

対論 脳と生命 (ちくま学芸文庫)

生命観を巡る対論でした。

「脳」をキーワードにして、現在の医療・社会制度・倫理観に鋭く食い込んだ内容でした。
生命を考える際に切っても切れない問いに「死とは何か」があるのですが、養老氏は「死体もヒトである」と断言します。
正直に言うと、彼の死生観には、少し抵抗のある部分もありました。

ヒューマニズムという語に対して、両者意見を言う場面があるのですが、そこでの議論が大変印象的でした。

「結局ヒューマニズムというのは、人間の間にまず差別を設け、強者による弱者の搾取や支配を正当化するイデオロギー装置であるといえる」(p154)

本来、ヒューマニズムは人間の平等を標榜する概念なのですが、それは明確な線引きを必要とします。あるサークルを規定し、その内部はすべて平等に取り扱うことにするのですが、外部は全く平等原理から外れるのだそうです。つまり、初めから差別を前提にしているのである、と。

もっと深遠なことも、述べられています。まぁ、とりあえずは、僕の能力ではこんぐらいの感想が分相応かと。