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小説の読み方~感想が語れる着眼点~ (PHP新書)

小説の読み方~感想が語れる着眼点~ (PHP新書)

副題に「感想の語れる着眼点」とあるように、・小説全体のもつ方向性・各センテンスのもつ方向・登場人物が作中でどのような働きをもつのか・それは具体的にどのような形で表わせられているのか、といった観点で小説の読み方が述べられていました。

大変勉強になり、ぼんやりとしか読めていなかったこれまでの自分の読書方法に、一つの指針が生まれたような気持ちです。

ただ、著者も述べているように、この本で述べられている方法が唯一の正しい方法ではないことは念頭に置かなければいいけないと思います。
文章を解剖することが読書の「目的」ではないですし、より深く文学作品と付き合ってゆきための一つの方法を提示したものが『小説の読み方』であるのでしょう。

作者の提示した文章に、プロットに対して疑問をもつということで、主体的・積極的に作品と繋がってゆくことができることを明瞭なかたちで、示したことにこの本の意義が集約されていると思います。
先に述べましたが、好きな読み方が読んだ人の数だけ存在しても良いと思います。しかし、文学研究とある意味では一致するのですが、作者と作品に近ずこうとすれば読みの筋道をある程度立てる必要があります。読書中に抱いた疑問を、作者に答えてもらう、もしくは自分で推測して答を設定する。そうした行為を行うための方法を明瞭に提示したのが、この本と言えるでしょう。